田んぼと畑の季節です その2

稲の苗 苗箱の中 ハウスの中

稲の苗。苗箱に入って生育中です。種もみから一つ一つ発芽します。

種子法廃止によって、数年後にどうなるのでしょうか。主要農産物を保護する国の制度でしたが、さらっと放棄するこの国の行く末はいかに。

なんと、この種もみを育てるのは、4年前から始まっているとのこと。米粒一つを育てるのに、実に気の遠くなるような行程を経ていることに思いをいたす人がどれくらいいるかどうか…

稲の苗

黄色っぽく変色するのは水不足の印。

苗が死んでしまわないように、温度管理と水分管理を徹底しないとならないのは、赤ちゃんを育てるのと同じです。

ハウスは放っておくと、40度を軽く超えてしまいます。水と風と温度がいかに大切か、ですね。寒いと生育状況は良くないですから、絶妙なバランスを狙って育てることになります。

ところで、生えそろった苗箱の苗の表面を手で撫でると、本当に柔らかで、しかし力強い生命力を感じることができて、なんとも言えません。幼い頃の記憶として、あのサラサラした肌触りと、香りと音が強く残っています。きっと農家であれば、みんな同じ感覚を持っていらっしゃるのではと思います。

決して潰さないように、折らないように。

生えそろった苗を撫でるのは、じーじばーばだけでなく、小さな子も少年もパパママも同じこと。なぜでしょうね。みんな同じことをしています。

紫折菜その後…

ムラサキオリナ、董立ち後は菜の花畑

予想はしていても、実際に見ると圧巻(笑)ハウス1棟分でも、十分過ぎます。

山形の在来作物の紫折菜。植物の生命力と言ったら!

この後、草刈機で刈り取られました。草刈りは子どもたち(ボーイズ2人組)の担当。乗用の草刈機で、丁寧に上手に刈り取ります。まったくダイナミックな遊びです。。

刈り取られた菜の花は、嵩が減ったところで土にすき込んで再生されます。ハウスは、風を通さなければ、50度にもなります。嵩が急速に減るのも、ご想像に難くないかと思います。人には危険極まりないですが。

田んぼと畑の季節です

トラクターで、圃場の表面を起こして、作物の生育に適した状況を作っていきます。年齢差60歳でも、一緒に作業。

2019年春、世は令和となったようです。
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

さて、農家にとっての春はハイシーズンの到来。伸び出す草と競争しながら、稲と野菜づくりの準備を進めていかなければなりません。

のんびり作業しているように見えますが、実際には、トラクターの上から、常に後ろを気にして振り向き続けないとなりません。ただ畑や田んぼを踏みつけて歩くだけでは、ぜーんぜん意味がないからです。一定の深さで掘り起こし続けないと、この後の作業、この後の野菜や稲の生育に大きく影響します。

すでにご存知の方も多いところですが、3月末で加工部門を終了したことに伴い、今年はほんの数名での農作業。月山の農場は、志ある若い農家さんたちが使ってくださるという申し出があったり、地元の山形大学農学部さんの協力を得たりして、荒らすことなく維持できそうです。

一番の懸念は、和がらしの収穫。

晴れ渡った日を見計らい、一斉に作業する必要があるので、人手は確実に足りません。非常に骨の折れる作業ですが、今となっては稀少な農作業であることは間違いありません。手伝ってみようかな〜という危篤な方、大募集します。

でも、いつになるか、全く予想がつきません(笑)

Facebookで呼びかけるか、派遣の方をお願いするか。月山パイロットファームのスタッフたちに、ものすごーーーく未練を感じるわけですね。何せ経験値が!作業スピードが!

山形県鶴岡市三和地区 畑起こし

3/4 N-1サミット-Oisix ra daichi-に参加して

20190304-n1_summit1
Oisix ra daichiさんの最も大きなイベントの一つ N-1サミット

2019年3月4日、大井町きゅりあんで行われたN-1サミット。
オイシックス、大地を守る会、らでぃっしゅぼーやの3社が一緒になって、正式にOisix ra daichiさんとしてスタートして、初のN-1サミットです。

農家オブザイヤー

純粋に利用者の投票によって選ばれるという農家オブザイヤー。ノミネートされた生産者には、お名前を存じ上げている方もいらっしゃって、頑張ってるなぁ!と逆に励まされたりもします。
農家オブザイヤー2019

独り言…

しかし一方で、抗し難い危うさも感じました。

ネットやカタログで商品を選んでもらうことを想定する場合、野菜でも何でも、とにかく形状が完璧なものを選別して、ある意味デフォルメして掲載をしていきます。その画像ばかりを見続ける消費者は、虫食いや傷のある野菜や果物をどう捉えるようになるでしょうか。

今はまだ、大きな問題にはならないかもしれません。これが、10年後20年後になったら、どうなるでしょう。

不味い漬物を作り続けた結果、食生活の変化も合間って、漬物を食べたいと思う若い層は激減しました。味噌や醤油も同じこと。練り物や豆腐も、見た目だけ立派にすることでコストを下げたところ、結局市場全体を地盤沈下させています。そんな現実が、頭をもたげました。

野菜を過度に選別することは、それ自体高いコストを払うことです。これは生産する農家のみならず、社会全体でのコストです。そして、形状が美しいものだけを揃えることは、それ自体がナンセンス。
多様性を認めたがらない日本人独特の感性が見え隠れするようでした。

ちなみに、月山パイロットファームが2018年夏に出荷しただだちゃ豆(庄内茶豆)、ある生協向けはクレームがゼロ、ある取引先向けは55も出てきました。しかも現品の返却がなし。当然ですが、今後のお取引は差し控えさせていただく旨、お伝えしました。

ワークショップ

ワークショップ_N-1サミット2019
基調講演のあとは、椅子を移動させて膝を付き合わせてのグループディスカッション

藤田会長のご挨拶によると、3社が合併したことで、4000名の生産者とか。
ただでさえ数少ない日本の生産者です。知り合いの知り合いは、知り合いの世界ですね。小売に呑み込まれないように、心して生産者同士のつながりを強めておく必要性を感じました。

ワークショップ等、少人数で他の生産者の方々と話せる機会があるのは醍醐味です。企画運営は簡単ではないと思いますが、非常にありがたいです。
特に経営側、生業として生産を行なっている方の考えや姿勢は、頭が下がるものばかり。悩みや疑問、関心事も共通することが少なくありません。どなたと話しても面白い、そんな会だと思います。

今回は、
○平田牧場の豚肉、国産の小麦と調味料で餃子を作る美勢商事さん
○阪神大震災で大被害を受けながらもジャムを作り続けている樽正本店さん
○トヨタのお膝元で本気のおとうふ作りを行なっているおとうふ工房いしかわさん
の皆さんとご一緒させていただきました。
おまけに、隣に座ったのは、同郷鶴岡の庄内共同ファームさんでした笑

味と安全性は保証できるほどに美味だけれども、原料コストの圧迫が悩ましい美勢商事さん、ジャムやコンポートに最適の原料品種を探し求める樽正本店さん、国産大豆にこだわって日配品としての豆腐をロスなく作る道を探るおとうふ工房いしかわさん。頷けるものばかりです。

月山パイロットファームの悩みもたくさんありますが、3月末で加工部門を終了するにあたって、どの品目に絞って農業生産を続けて行くか販売のスタイルはどうするか、これまで蓄積した加工に関する記録とノウハウを、いかに次世代あるいは意思ある方々に手渡していくか=公開して行くか、という点です。

それぞれに課題を抱えながらも、私たちが取り組んでいることは、きっと将来に渡って誇れる事業活動であることを感じました。ただ、まだまだ消費者への理解は進んでいないのも事実です。
それは、私たち自身が、本業が忙しすぎて手が回らないとなおざりにしてきた点を見直すこと。つまり、もっと丁寧に、分かりやすく、過程と工程を伝えることにあります。

伝えようとすることは、自分たち自身の中にも大きな発見があります。

うちら、こんなにスゴイことやって来てたのだね…笑

なんだか流されずに生きている感じがします(感じ、です笑)

そして、思うように伸びない業績、簡単には行かない人材育成と人材獲得、締め付けが強くなる一方の公的な規制、上がる一方のコストと税金・社会保険料負担で、ほぼ喪失しかけている自信を、少しだけ取り戻すことができるのも事実です。

会を設定してくださったOisix ra daichiのみなさん、ありがとうございました!

2/18 生活クラブ千葉 園生デポーで新・おしゃべりキッチン

味噌パンと白こうじたくあん漬の漬け汁ホットケーキも。塩分がだいぶ高めですが、2月に美味しい試食メニュー

今回は、生活クラブ千葉 千葉ブロックの皆さんからお声がけいただき、おしゃべりキッチンに参加させていただきました。

テーマは『安いものには訳がある』。マルモ青木味噌さん、泰山食品商行さんと月山パイロットファームの3生産者が、30分ずつそれぞれの消費材についてお話をしました。

いつもながら、自分の写真を撮っていただくのを忘れてしまいますが…
月山パイロットファームの交流会でお話しすることはシンプルです。
_なぜ生活クラブとの提携が始まったか
_どんな農業・どんな未来を描いているのか
_そのために実践している農業と加工は何か
_現在直面している困難は何か
_一人ひとりの暮らしから変えられることは何か

合間の雑談の方が面白いかもしれませんが(笑)

見た目に安くて長持ちする食品は、何かを犠牲にしている、犠牲にする可能性が高いです。
そして、最後は自分の舌で見極められるようになること。遺伝子組み換えされた食品やゲノム編集された食品は、もはや舌では見分けがつかなくなるでしょう。これが最も恐ろしいことですね。世界、というかすでにゲノム食品の輸入を高速で可能にした日本に住む以上は、食べることによるリスクも考慮に入れた方が良さそうです。
(参考:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190318/k10011852411000.html)

もう一言言わせていただければ、コンピュータのプログラムはたった1行、たった1文字のバグがあっても、全体が動かなくなったり別の作用を起こしたりします。アプリが常にアップデートを繰り返すのも、これが要因の一つです。全体のプログラムが可視化できているプログラムでさえその状態なのに、生物の遺伝子のゲノム編集をすること、そして食べ物として実際に人間が食べていくことは、どれほどのバグになって現れてくるのでしょうか。

【明太子やたらこの泰山食品商行さん】

まだまだフレッシュな新人さん。が、1年もすれば、すっかり育って話し上手になるはず。

お話は河野さん。お話もだんだん板についてきました。
明太子はスケソウダラの魚卵。日本に水揚げされるものは全て鮮度が抜群!というイメージがありますが、実際にはそうでもないようです。ロシア産の魚卵を原料にするのには訳があり、漁獲して船上でそのまま魚卵を取り出し凍結するからとのこと。鮮度が命の明太子、泰山さんではイメージだけで原料を選んではいないそうです。

添加物を使わずに明太子製造を行なっている会社は、日本の中でも現在1社のみ。
それほどに合成化学調味料や保存料が使われるのが業界の常識になっている明太子。稀少であり、貴重であるのは言うまでもありません。しかも、他の消費材同様に、価格が高くない!

また、食品表示に表れない添加物の仕組み、発ガン性その他の毒性についてもお話の中で触れられていて、消費材へのこだわりを知ることができます。

辛くて食べられない、生臭いなどの理由で嫌厭する人も少なくありませんが、おしゃべりキッチンの試食の度に、「明太子は好きでなくて買っていなかったのですが、今まで持っていた明太子のイメージと全然違って、本当に美味しいですね。」という組合員さんの声を聞いています。

【マルモ青木味噌さん】

話の引き出しがとにかく多い!何度聞いても別の話題が入っています。

お話は、鈴木さん。いつもながら冷静!工場で味噌を実際に作っている人の話だなと、つくづく感じました。

漬物もそうですが、加熱をすればタンパク質は変成しますから、酵母菌や酵素は死んでしまいます。かと言って、酵母が生きたままで常温で流通させれば、月山パイロットファームの青菜漬と同様、パンパンに膨らんできて破袋してしまいます。ガス抜きの栓を1パックずつ付ければ、1枚15円の価格増。

常温流通で低価格で供給しようとすれば、自ずと加熱殺菌(つまり酵母も酵素も死んでしまう)の道に入ってしまうというのが発酵の世界です。

試食時間は食べ物と向き合う機会

食べ比べ試食の準備。味噌って熟成期間で味が全然違うんですよ!そして、美味しすぎる明太子がずらりと並びます。贅沢!

試食タイムは、いちばんのお楽しみ!多くの消費材に触れられる機会とも言えますが、一方で、一つの食べものにまっすぐに向き合う機会でもあります。

食べて美味しいのはもちろんですが、その一口から広がるストーリーを感じていただければと思います。それはきっと、毎日の暮らしに深みと彩りを与えてくれるはずです。

主催してくださった千葉ブロックの皆さん、そして足を運んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。
今回も素晴らしい出会いがあり、同時に、頭の下がる方々の姿勢も感じることができました。

忌憚のないご意見を、お寄せいただけたらと思います。(文責:いずもじ)