田んぼと畑の季節です

トラクターで、圃場の表面を起こして、作物の生育に適した状況を作っていきます。年齢差60歳でも、一緒に作業。

2019年春、世は令和となったようです。
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

さて、農家にとっての春はハイシーズンの到来。伸び出す草と競争しながら、稲と野菜づくりの準備を進めていかなければなりません。

のんびり作業しているように見えますが、実際には、トラクターの上から、常に後ろを気にして振り向き続けないとなりません。ただ畑や田んぼを踏みつけて歩くだけでは、ぜーんぜん意味がないからです。一定の深さで掘り起こし続けないと、この後の作業、この後の野菜や稲の生育に大きく影響します。

すでにご存知の方も多いところですが、3月末で加工部門を終了したことに伴い、今年はほんの数名での農作業。月山の農場は、志ある若い農家さんたちが使ってくださるという申し出があったり、地元の山形大学農学部さんの協力を得たりして、荒らすことなく維持できそうです。

一番の懸念は、和がらしの収穫。

晴れ渡った日を見計らい、一斉に作業する必要があるので、人手は確実に足りません。非常に骨の折れる作業ですが、今となっては稀少な農作業であることは間違いありません。手伝ってみようかな〜という危篤な方、大募集します。

でも、いつになるか、全く予想がつきません(笑)

Facebookで呼びかけるか、派遣の方をお願いするか。月山パイロットファームのスタッフたちに、ものすごーーーく未練を感じるわけですね。何せ経験値が!作業スピードが!

山形県鶴岡市三和地区 畑起こし

漬物加工部門の営業終了のお知らせ

月山パイロットファームの漬物加工部門は、2019年3月31日をもちまして営業を終了いたします。

1977年より、大変多くの方々に支えられ成長を重ねてきた加工部門ですが、諸般の事情により継続が非常に難しくなりました。
大変急な決定となり、関係各位には多大なるご迷惑をお掛けしていることを、心からお詫び申し上げます。

各方面から惜しまれる声を頂戴し、誠にありがたく存じておりますが、従業員として月山パイロットファームを支えてきてくれたスタッフの再就職の機会も考慮しまして、3月末での終了を決定いたしました。

なお、在来野菜を含む野菜類有機・特別栽培の水稲の生産は継続いたします。
誠に勝手ながら、和がらし収穫など、超短期での人材が不足する場合には是非お手伝いをいただけると幸いです。

これまでの長年のご愛顧に心よりの感謝を申し上げるとともに、今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。

3/4 N-1サミット-Oisix ra daichi-に参加して

20190304-n1_summit1
Oisix ra daichiさんの最も大きなイベントの一つ N-1サミット

2019年3月4日、大井町きゅりあんで行われたN-1サミット。
オイシックス、大地を守る会、らでぃっしゅぼーやの3社が一緒になって、正式にOisix ra daichiさんとしてスタートして、初のN-1サミットです。

農家オブザイヤー

純粋に利用者の投票によって選ばれるという農家オブザイヤー。ノミネートされた生産者には、お名前を存じ上げている方もいらっしゃって、頑張ってるなぁ!と逆に励まされたりもします。
農家オブザイヤー2019

独り言…

しかし一方で、抗し難い危うさも感じました。

ネットやカタログで商品を選んでもらうことを想定する場合、野菜でも何でも、とにかく形状が完璧なものを選別して、ある意味デフォルメして掲載をしていきます。その画像ばかりを見続ける消費者は、虫食いや傷のある野菜や果物をどう捉えるようになるでしょうか。

今はまだ、大きな問題にはならないかもしれません。これが、10年後20年後になったら、どうなるでしょう。

不味い漬物を作り続けた結果、食生活の変化も合間って、漬物を食べたいと思う若い層は激減しました。味噌や醤油も同じこと。練り物や豆腐も、見た目だけ立派にすることでコストを下げたところ、結局市場全体を地盤沈下させています。そんな現実が、頭をもたげました。

野菜を過度に選別することは、それ自体高いコストを払うことです。これは生産する農家のみならず、社会全体でのコストです。そして、形状が美しいものだけを揃えることは、それ自体がナンセンス。
多様性を認めたがらない日本人独特の感性が見え隠れするようでした。

ちなみに、月山パイロットファームが2018年夏に出荷しただだちゃ豆(庄内茶豆)、ある生協向けはクレームがゼロ、ある取引先向けは55も出てきました。しかも現品の返却がなし。当然ですが、今後のお取引は差し控えさせていただく旨、お伝えしました。

ワークショップ

ワークショップ_N-1サミット2019
基調講演のあとは、椅子を移動させて膝を付き合わせてのグループディスカッション

藤田会長のご挨拶によると、3社が合併したことで、4000名の生産者とか。
ただでさえ数少ない日本の生産者です。知り合いの知り合いは、知り合いの世界ですね。小売に呑み込まれないように、心して生産者同士のつながりを強めておく必要性を感じました。

ワークショップ等、少人数で他の生産者の方々と話せる機会があるのは醍醐味です。企画運営は簡単ではないと思いますが、非常にありがたいです。
特に経営側、生業として生産を行なっている方の考えや姿勢は、頭が下がるものばかり。悩みや疑問、関心事も共通することが少なくありません。どなたと話しても面白い、そんな会だと思います。

今回は、
○平田牧場の豚肉、国産の小麦と調味料で餃子を作る美勢商事さん
○阪神大震災で大被害を受けながらもジャムを作り続けている樽正本店さん
○トヨタのお膝元で本気のおとうふ作りを行なっているおとうふ工房いしかわさん
の皆さんとご一緒させていただきました。
おまけに、隣に座ったのは、同郷鶴岡の庄内共同ファームさんでした笑

味と安全性は保証できるほどに美味だけれども、原料コストの圧迫が悩ましい美勢商事さん、ジャムやコンポートに最適の原料品種を探し求める樽正本店さん、国産大豆にこだわって日配品としての豆腐をロスなく作る道を探るおとうふ工房いしかわさん。頷けるものばかりです。

月山パイロットファームの悩みもたくさんありますが、3月末で加工部門を終了するにあたって、どの品目に絞って農業生産を続けて行くか販売のスタイルはどうするか、これまで蓄積した加工に関する記録とノウハウを、いかに次世代あるいは意思ある方々に手渡していくか=公開して行くか、という点です。

それぞれに課題を抱えながらも、私たちが取り組んでいることは、きっと将来に渡って誇れる事業活動であることを感じました。ただ、まだまだ消費者への理解は進んでいないのも事実です。
それは、私たち自身が、本業が忙しすぎて手が回らないとなおざりにしてきた点を見直すこと。つまり、もっと丁寧に、分かりやすく、過程と工程を伝えることにあります。

伝えようとすることは、自分たち自身の中にも大きな発見があります。

うちら、こんなにスゴイことやって来てたのだね…笑

なんだか流されずに生きている感じがします(感じ、です笑)

そして、思うように伸びない業績、簡単には行かない人材育成と人材獲得、締め付けが強くなる一方の公的な規制、上がる一方のコストと税金・社会保険料負担で、ほぼ喪失しかけている自信を、少しだけ取り戻すことができるのも事実です。

会を設定してくださったOisix ra daichiのみなさん、ありがとうございました!

2/7 生活クラブ千葉 市原ブロックおしゃべりキッチン

今回は、(何と!)生活クラブ千葉 市原ブロックの皆さんからお声がけいただき、おしゃべりキッチンに参加させていただきました。

テーマは『むかしながらの「○○○」』ということで、3生産者がそれぞれ扱っている消費材を通して、ご飯とお茶の食生活が魅力的に感じられるようにお話をしました。

ご一緒したのは、お酢の生産者私市醸造さん、およびアジの開きなど干物の生産者奥和さんでした。

2月は赤かぶ漬や青菜漬の辛みがおさまってきて、最も美味しくなる季節と言えると思います。良い時期に呼んでいただいたな〜と思いながらの交流会でした。
数分遅刻の登場で、大変ご心配をお掛けしましたが、熱心な参加者のみなさんとともに、ホームグラウンドでの交流会は格別でした!

交流会では、月山パイロットファームが取り組んできた循環型の農業について、まずお話をします。
実際には現会長が、なぜ創業するに至ったか、どんな方々やどんな考え方に支えられて弊社が育ってきたかをお伝えしています。

「原料が足りなければ、自分たちで作るものと思っていた」

このような考えのもと、赤かぶも青菜も、民田なすも和がらしも、かつては大根やごぼうまで自社で育てていました。メロンコ漬のメロンまで!
意識の高い取引先のニーズに応えつつ、生産製造する自分たち自身にも、危ない薬は用いたくない。この意思を行動の上でも貫徹するのは、なかなか容易なことではありません。
参加者のみなさんに、漬物の加工の一歩手前、野菜が大地から育つところから思いをいたしていただけたら嬉しいです。

農業は農家だけの課題ではありません。一国の食糧の問題と言えるでしょう。そしてそれはすなわち、土から離れて暮らす一人ひとりの課題でもあります。
一次産業無くして、人は存在できません。

【お酢の私市醸造さん】

お話は、おなじみの野口さん。ソフトな語り口と論理的なお話、そして主婦目線(!)が組合員さんのハートをつかみます。

30分という限られた時間ですので、製造工程を詳しく話していただく時間はありませんが、まず原材料が明確で、遺伝子組み換え由来のものを利用していない点、そして、製造方法も最新の技術で安定して生産する一方で、木桶での酢酸発酵という技術を残し続けている点は特筆に値するでしょう。

私市さんの食酢は、ほんのりと木の香りがします。まろみがあるというか、お値段の割に非常に厚みのある味わいです。比べたことはありませんが、りんご酢も本当にフルーツの旨味が生きていますので、市販されているりんご酢とは風味が格段に違うでしょう。

しかも瓶入り。しかも、リユース瓶。
容器の瓶まで徹底している、つまりゴミを社会に出さないようにする取り組みにも長年取り組んでいらっしゃいます。

月山パイロットファームの漬物にも欠かせないお酢。赤かぶ漬や大根の甘酢漬けで欠かせない原料です。そして、加工場の床の塗装をも劣化させるほどの酸度ですから、食品の保存にも非常に効果的だと思います。
何よりも、食べ物が美味しくなる!先人の知恵は素晴らしいですね。

【干物の奥和さん】

お話は、男前の奥村さん。交流会はともかく、新・おしゃべりキッチンは初登場とのことです。干物も奥が深いので、本当に大勢の方からのお話を聞いて欲しいと思います。添加物なしで、ある程度の量産をできる生産者は、日本全国を探しても限りなく少数だと思います。

海にも住所があること、奥和の干物は、海のどこの番地でどの船がどのように漁をして水揚げしたかが追跡できること、効率は良くなくても伝統の製法で魚の持ち味を活かして干物に仕上げていること等々。
到底書き切れるものではありませんが、スピリッツは月山パイロットファームと同様、あくまでもビジネスではありますが、食べる人の未来が幸せになって欲しいと願っているなぁと感じました。

私市醸造さんもそうですが、詳しい話を聴くには30分では足りません。
ぜひ、1生産者をブロックなどで呼んでいただいて、詳しい学習会に参加していただければと思います。デジタルでは伝えにくい思いと空気感を、一人でも多くの人に味わっていただきたいと思います。

合成のアミノ酸の味がしない、天然の複雑な味わいがあるアジの干物。軽く焼くだけですが、背骨以外はすべて食べられてしまいます。小さい子にこそ食べさせて欲しい、本物の味!
まだ外国人の友達に食べさせたことはありませんが、外資系の有名ホテルが目をつけ流のは納得が行きます。


試食タイムは、定番になりつつある 赤かぶ漬のボルシチ風。漬物各種とともに、アジのみならずたくさんの干物バイキング!ピクルスは、3種の酢それぞれで作って食べ比べ。本当に贅沢な試食でした。
干物もお酢も漬物も、ぜひ食べ続けてくださいね。(文責:いずもじ)

1/18 生活クラブ東京 まち玉川 で 新・おしゃべりキッチン

会場は世田谷センター。生活クラブ発祥の地。

【むかし話】
相馬会長夫妻が、そのむかし、40年近くも前になりますが、山形からはるばる世田谷センターに出かけたことがあったそうです。
しかも、2泊3日で世田谷センターにお泊まり!
現会長は、お泊まりの翌朝、生活クラブ顧問の河野さんと一緒に、牛乳配達を手伝ったとのこと。二人で懐かし〜〜〜!!と当時を振り返っていました。

2019年度のスタートは、まち玉川の皆さんと新・おしゃべりキッチン!
市販品と消費材の違いを、『安いものには訳がある』というテーマに沿って3生産者でお話をさせていただきました。

静かに準備は進みます
センターが会場だと良いことがあります。リユース瓶が丁寧に並べられて、回収を待っていました。また戻っておいで!
食べる人・利用する人たちが、その過程を目にできることは貴重なこと。消費材を大切に扱っていただいていると思いました。

今回も赤かぶ漬の汁をすべて使ったボルシチ風。
塩漬けにして酢漬けしてある赤かぶ。簡単には煮崩れないのが、ポイントです。

定番。和高スパイスさんのミックスハーブとの相性が最高。ハーブの香りが持続する訳を知りたい!

さて、今回もスライドを使って、循環型の農業とその精神、また、加工品である漬物ができる過程を駆け足でお話させていただきました。
「異常気象を感じることはありますか?」という質問があり、昨年の赤かぶや山形青菜の収穫量とその時期、生育スピード、降雨と種まきなどについて触れることができました。最も心配なのは、民田なすからし漬の民田なすという庄内地方の在来作物の小ナスはともかく、和がらしの収穫量が少ないために欠品予定だということです。(月山パイロットファームでは、和がらしも自社農場で栽培しています)

月山パイロットファームの民田なすからし漬は、そのレシピを完全に公開しても、おそらく日本国内で(つまり世界で)同じように作ることができる会社は無いと思っています。5倍の価格で買ってもらえるのであればともかく!
和がらしの収穫は過酷で、生産する人がほとんどいなくなってしまいました。それに加えて、近年の天候不順。例年、和がらしの背丈は2m以上になるのに、昨年は1m少し。そして、収穫量も減。

これまでの経験上、10人に食べていただいたら、1〜2人はリピーターになる民田なすからし漬。それほど個性的で、記憶に残る味わいなのだと思います。
どんなにご希望をいただいても、無いものは無いですから仕方ありません。そして、会社の存続自体も、避けがたいリスクに晒されることになります。

【静岡の練り物屋さん、こめや食品】

練り物は日本各地にありますが、実は地域によって製法が全然違うとのこと

お話は川崎さん。
こめやさんと言えば、伊達巻き!

すり身・卵・調味料すべてこだわった特別な伊達巻を10万本も出荷するというのですから、人気の高さがうかがえますね。アミノ酸などの化学合成調味料も使わないため、素材良さを素材の持ち味を最大限に引き出す努力、そして防腐剤を使わないために、品質管理も徹底せざるを得ません。
漬物は酢や塩、唐辛子等で、ある程度の菌類の繁殖を防いだり、他の有用な菌類を優先的に培養する策がありますが、生の卵やすり身を扱うのは段違いの気遣いが必要なります。

また、原料についても貴重なお話を聞くことができました。
練り物はスケソウダラも原料にしますが、最大の輸入先はアメリカ。アメリカでは、スケソウダラの漁獲時に専門家が漁船に乗り込み、直に魚を調査。その結果に基づいて、次年度の漁獲高を決めていくという方式が採用されているとか。
桜えびが水揚げされない状況(大幅な漁獲量の減少)と比べると、全然違います…
アメリカでは漁獲量も調査に基づいて決められ、漁獲制限の違反者には厳罰があることから、行政や専門機関主導で資源を守る姿勢がうかがえます。

水産資源も農産物と同様に、気候変動の影響を受けます。
やはり、個々の生産者の努力とは別に、より大きな長期的な視点に立った、適確な保護育成が必要だと感じました。現場押し付け型では、当然限界があります。

【明太子の泰山食品商行さん】

お話は、山崎さん。語り口調は穏やかですが、時折挟むピリッとしたブラックな冗談が絶妙です。まさに泰山さんの明太子のお味のような!
添加物なしで明太子を作ること自体が、そもそもの挑戦。業界常識からは考えられないことのようです。そうですよね、何と言っても魚卵です。事故が起こらないような徹底した品質管理と原材料へのこだわり無くして、自然な味わいの明太子の開発はできないでしょう。

特に、大手メーカーが、真子と呼ばれる最高級品を原料とせずに、あの手この手で美味しそうに見える価格の安い商品を開発しているリアルなお話。

涙ぐましい努力で価格を上げて(あるいは下げて)利益を確保するのが企業ではありますし、目の前の提示された価格で安さに負けるのが日本人の心理かと思いますが、生産にも消費にも、時間軸が足りていない気がするのは私だけでしょうか。

試食していただくことで初めて伝わること

試食していただくと、「これ好きなんです」というありがたいお声がけに加えて、「漬物って買ったことがなかったのですが、こんなに美味しいんですね」という声。特に若い方、組合員になりたての方から、このような声がけをいただくことがあります。

そうなのです。カタログやネットで美味しさを訴えたとしても、食べていただくのにはかないません。

現在、漬物全体のイメージが非常に悪いのも確かです。醤油や味噌、酢も同様で、本来とても身体にも良いはずのものが、美味しいというイメージを持たれていません。
ましてや、お金を出して買おうということには、ならない訳ですね。

このイメージを形成したのは、一体だれ?どこに原因が?

今回も、当日までの企画、そして当日も朝早くから会場設定と試食作りにご協力いただいた組合員と職員の皆さんに、心からの感謝を申し上げます。
参加いただいた方々も、どうもありがとうございました!

今後とも、忌憚のないご意見やご感想をお待ちしております。(文責:いずもじ)